Twitterのビジネス利用???
Twitter。
非常に面白いツールだと思います。
今日、フォロワーの きの @wata_kino さんから嬉しい評価を頂きました。
「岩下の新生姜の社長がやってる活動はもっと話題になっても良さそう。とっても丁寧。じゃっかんツイ廃傾向があるけどw」
中でも、「じゃっかんツイ廃傾向」とのご評価は、その通りだと思います。それで、私のアカウント @shinshoga の性質から考えるツイッターのビジネス利用について、思う処を書いてみます。
実は、私は、SNSのビジネス利用について、そもそも懐疑的な人間です。
Twitterは、アカウント取得時は、親しい友人がmixiやblogを離れがちになり、Twitterを普段の近況の連絡に常用するようになった為、受動的に始めました。個人blogやmixi同様、当初は、岩下食品の社長であることや本名は明かさず、匿名でやっていました。これは、もちろん、発言の自由度を考えてのことです。好き勝手、音楽のことや、愚痴やら、政治に関することなども、周りの目を気にせずに話したかったからです。
でも、昨年のある日、エゴサーチをかけたのです。「新生姜」で検索。すると、毎日、平均十名強の方が「岩下の新生姜」について、つぶやいてくださっているのを知りました。それも、ひとりが何回もつぶやく例もわずかにはありましたが、多くは、一度つぶやいて、それっきりになっている。つまり、今日新生姜についてつぶやいてくださった10人は、昨日の10人とは別の人なのでした。・・・これは、結構、大きい数なのではないかと感じました。
そして、そのつぶやきの内容の多くは、「美味しい」「好きだ」という意味のツイートでした。
もちろん、仕込みなど一切していませんから、素直な、正直なお声です。心底、有難いと、思いました。最初は、それらの発言を「お気に入り」に入れていくだけでしたが、だんだん、お礼を言いたくなったのです。
そこで、アカウントに本名を入れ、プロフィールに岩下食品代表取締役との素性を明かした上で、ひたすら、発言してくださった方に、お礼のリプライをかけていくようにしたのです。
商品のファンの方、ユーザーの方が見てくれているアカウントになった。そう思えば、それらの方々に、少しでも、期待される情報を提供したいと思い、発言内容は変質していきました。
社長として、商品や販促、経営に関する情報は、日々、山のようにあります。(ただ、ユーザーの方にとって価値がある情報という意味では限界はありますが。)少しずつ、それらを開陳していくようにしたのです。
幸い、昨年から今年にかけては、会社の色々な試みが、インターネットでも観ることが出来る状況に整理が進んでいた為、それらにリンクし、紹介することが、ひとつの大きなネタでありました。
例:クックパッドのレシピコンテスト
例:ネット通販の紹介
例:会社のサイトのレシピ・コーナー
例:YouTubeでの新生姜料理法の動画
などです。
売上につなげたいとかいうのは、正直二の次で、これらの情報を喜んで頂けるといいなという思いが、実は先にあります。社内でも、私がTwitterをやっているのは「遊び」と、ずっと、公言しています。「仕事」とは呼べないと。というのは、ここに至っても、やはり、SNSユーザーの弊社品購買者に占める割合は、極めて小さいであろうと、私は踏んでおりましたから。
基本は、ユーザーとの対話です。一対一を基本とする対話です。
「岩下の新生姜うまい!」>「ありがとうございます!これからもよろしくお願いいたします」・・・これが、基本形です。そして、そこから広がって、出来れば、それぞれのユーザーの方と、いろんなお話をしたい。それぞれに、価値観があって、人生があって、食習慣があって、そこにたとえば「新生姜」が登場するのですから。
それだけでも素晴らしいと、正直、実感しています。
というのは、エンドユーザーの声を、一体、私達メーカーはどのように手に入れているのかということなのです。
エンドユーザーの声を聴く手法は、まず、常に開いている窓口としては「お客様相談室」があります。電話・メール・手紙を合わせても、「お客様相談室」に届くユーザーの声は、年間1,000件ほどです。しかし、この「相談室」は、主に、クレームや問い合わせに関する対応の為に開かれているものです。・・・そして、中には、賞賛の声や、商品改良に関するご意見などもありますが、ほんの一握りです。クレームと純然たる問い合わせ(販売店や成分・産地など)を除けば、一年間でも100件もないのが、「お客様相談室」を通じた、お客様の声なのです。
他には、通販に封入しているアンケート葉書や、調査会社を使った対面調査などがあります。いずれも、どちらかといえば、ユーザーの声ひとつひとつに対応すると言うよりも、数値化し、傾向を捉え、大きな政策変更を加える為に、ユーザーの声を聴く手法といえます。
これに対し、私のTwitterアカウントでは、お客様の声(まさに食べてくださって「おいしい」とか「好きだ」とか、ごく稀に「まずい」とか)をどんどん「お気に入り」に登録しているのですが、この数が、約1年で5,000人強、3万ツイートに登ります。(うち約1万ツイートは私の発言ですから、差し引き2万ツイートが、「お客様の声」ということになります。)
実際に、ユーザーの方と対話を試みた数も、恐らく7割の方に声をかけているので、3,500人のユーザーの方に、なんらかのレスポンスをしているのです。ただ「ありがとうございます」程度のものも含めてですが。
これが、私のアカウントの特殊性らしく、実は、クラスト(Qrust)というサービスで、私のアカウント特性を調べますと、ある一週間の調査結果では、「コミュニケーション人数」が、調査対象数百万アカウントの中で、上位0.01%、1,289位という結果が出ていました。つまり、Twitterの利用法としては、かなり異常な利用法をしていると言えます。個別1対1の対話が主で、できる限り、お客様の声には対応してみようという姿勢でしたが、そんな使い方は珍しいというわけなのです。
でも、その結果、ユーザーの方それぞれと、なんとなく絆のようなものが出来上がり、おひとりおひとりが、それぞれ別の生活・価値観の中で、弊社の商品を好んで使ってくださっている姿が、リアルに浮かび上がってくるのでした。オープンにされた、それぞれの生活は、それぞれに、美しいもので、その方々おひとりおひとりと、商品を通じて、結びついている幸せを実感します。
そこまでは、素晴らしいツールと思います。ひとりひとりのユーザーとの関係が深まり、あまりこんな言い方をしたくはないですが「ファンづくり」になっていることは間違いないのです。・・・そして、私も、商品を好いてくださっているそれぞれのユーザーの皆様のファンになっている。
しかし、そうであって尚、SNSが、私どものようなメーカー(大量生産大量消費によって生計を立てる)としての「ビジネス」にどれだけ有効なのかについては、いまだ、疑問を持っています。
※ちなみに、小規模店舗の経営には、SNSの効き目は十分にある、と私は思っています。その意味では、盟友「よもだそば」さんのファンづくりの試みは、確実に、Twitterのビジネス利用が非常にうまく動いている例だと思います。
恐らく、ビジネスとして、確かに「効く」んだなという実感を持つに至るには、Twitterだけではだめで、リアルの売場としっかりと連動するような仕組みが成り立っていかなくてはならない。つまり、それは、スケールということなのですが、私のような「ツイ廃」をもってしても、売上に効いてるなあという実感がさっぱり乏しいのは、Twitter参加者の特性や範囲と関連があると言わざるをえません。
でも、まだもう少し、いろんな試みを、Twitterを通じて、やってみたい。今は、なにより、「お客様おひとりおひとりすっごく大切ですよ、どうもありがとうございます」という意思表示の為のツールとしてのTwitterですが、果たして、「ビジネス利用」としての価値があるものに、これから変化するのか、(勿論、それを私も望んでいますが)自分自身の試行錯誤で、見届けたいと思っています。
mixiがあっという間にすたれたように、Twitterも、時代の過渡期の産物であることは間違いないでしょう。いずれ、なにか、別のもっと面白いものにとって変わられるはず。今は想像もつかないようなものに。Twitterが、時代の役割を終えるときが、必ず、おそらくは数年の間にやってくることでしょう。
私は、それまで、付き合えるだけ付き合ってみようと思っています。
なにより、この仕事を始めて20年、こんなに、大勢のお客様の声を日々聴くことができたのは、はじめてなのですから。
改めて、岩下の新生姜をはじめとする弊社品について、つぶやいてくださっている皆様に、心からの感謝を込めて、本稿を閉じます。